僕が東温市に移住してきて驚いたのは、この市に高畠華宵の記念館(*2)があったことだ。
彼の少女画を僕は非常に好きだったので、是非大正ロマン館に行ってみたいと思い足を運んだところ、思ってもみない展開が待っていた。
高畠華宵の絵の中に、これも大好きなマックスフィールド・パリッシュ(*3)の影響が見られたこと。
女性の柔らかな体のラインを描く版画家のパリッシュがアメリカンの出版会でもてはやされたのは、華宵と同じ頃で、しかも華宵は当時アメリカに渡っている。
二人の画家の共通点を挙げたところで意味がないが、華宵が渡米中にマックスフィールド・パリッシュの版画を見た事は確かだろう。LIFEの表紙に何度も掲載されたのだから。
そしてもう一つ、そのロマン館に球体間接人形の写真が多く存在したことだ。
華宵と人形の関係を想像したことはなかったが、言われてみれば確かに共通点はある。華宵の少女画はものすごい数に上るが、どれも表情と言うか顔が一緒だと指摘されていること。
同性愛を指摘されている華宵が、あれほど多くの女性を描けたのも、人間を描いているのではなく、たくさんの衣装バリエーションを身に纏った一人の女(の人形)を描いているからかもしれない。こう書くと舞台芸術の世界で人間を描くことに躍起になっている作家としての自分が変に思えてくるのだが。
そこで人形と出会ったことが、僕の隠されていた変態性(これは僕が言ったんじゃない。他人からの指摘によるものだ)に火をつけたことは事実だ。長いこと温めていたものが、一気に爆発しそうになった。
そこで僕は館長さんに「僕のライフワークを見つけた」と高らかに宣言してしまった。
そして一緒にハンス・ベルメールの画集を見た友人にも、その日のうちに熱い思いを報告した。
だが、結局金銭面での条件がまるで整わず、空中分解してしまったのだ。
実は興奮していた僕は、さっそく東京の美術家や照明家に頼み、大正ロマン館でのパフォーマンス協力の賛同を得ていたのに、霧散してしまったのは何とも歯がゆかった。でも「ライフワーク」と位置付けた僕の思いは続いている。
本当は今年のフェスティバルの予算から補助金を捻出してもらえば良かったのだが、時すでに遅く、わずかにガラコンサート(*4)のプロデュースしか今年2月までには打ち出すことができなかった。
今回こういう機会が与えられて、内容的に大人の芸術であることを分かってもらった上で、認めていただければ、非常に質の高いパフォーマンスをお見せできるものと自負している。
(*2)愛媛県東温市にある美術館「高畠華宵大正ロマン館」
http://www.kasho.org/bijutsukan.html(*3)マックスフィールド・パリッシュ(英: Maxfield Parrish、1870年7月25日 – 1966年3月30日)は、アメリカの画家。
(*4)2018年9月9日に行われたミュージカル・ガラコンサート「SHALL WE SING?」
https://art-village-toon.jp/performance/post-456/
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Jin Tadano
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